芭蕉の旅「奥の細道」No28・等栽

等裁を尋ねて

福井から三里ほどのところで夕食をとろうとするが、夕暮れの黄昏せまる路は心細く不安です。

ここには等裁とう俳諧の古老がいるはずで、何時の年だったか江戸に尋ねて来たことがあります。あれからもうはるか十年余りはなりましょうか。どれほど年老いているでありましょう。まさか死んではいないでしょうと、人に尋ねると、まだ存命であるといい、その住むところを教えてくれました。

それではと市中を離れたみすぼらしいそなつな小家に、夕顔が咲き糸瓜が生えて、鶏頭や帚木で入り口の細い扉が隠れているほどです。

どうやらこの家であるだろうと、門を叩けば、侘し気な女が出て来て「どこから来たお坊さんですか、主は今近所へ出かけていて留守ですが何かご用ですか」と言います。どうやら彼の妻のようです。昔が偲ばれる美しい人です。やがて等裁が帰り再会すると、その家に、二晩泊まることになります。

やがて名月が美しいと言われる敦賀へ旅立つのですが、等裁も見送ろうとしましたが、裾がからまり、路の出鼻をくじかれてしまったとおかしくからかいながら旅立つのでした。