早春の声が聞こえる頃となりました。まだもう少し東京では寒い日が続きますが、例年通りなら、お雛祭りの頃には風も和らいでくるのですが、今年は果たしてどうなのかな?
そんな、早春の二月となるとやはり梅の咲き始める頃ですね。
此の梅の花は、万葉の頃には桜よりも好まれて多く歌にも詠まれていました。
芭蕉の江戸時代はどうなのでしょうか。今回は梅の句を探してみました。約21句見つかりました。
そして、最後に「むめ」として書き遺されている句を加えました。そうすると合わせて約22句となります。「むめ」の句は有名な句なので「梅」では無いのですが梅の事を詠んでいることに間違いないとします。
盛なる梅にす手引風も哉
降る音や耳もすふ成梅の雨
我も神のひさうやあふぐ梅の花
るすにきて梅さへよそのかきほかな
初春先酒に梅賣にほひかな
世にゝほへ梅花一枝のみそさゞい
梅白し昨日ふや鶴を盗れし
梅こひて卯花拜むなみだ哉
忘るなよ藪の中なる梅の花
さとのこよ梅おりのこせうしのむち
梅つばき早咲ほめむ保美の里
先祝へ梅を心の冬籠り
あこくその心もしらず梅の花
香にゝほへうにほる岡の梅のはな
手鼻かむをとさへ梅の盛哉
梅の木に猶やどり木や梅の花
御子良子の一もと床し梅の花
紅梅や見ぬ戀つくる玉すだれ
梅若菜まりこの宿のとろゝ汁
梅が香やしらゝおちくぼ京太郎
かぞへ来ぬ屋敷~の梅やなぎ
むめがゝにのつと日の出る山路かな
やはり梅の句は風流ですね。芭蕉にとっても梅は美しくて香りの良い春の花だったようです。
芭蕉は、梅の花を白梅と紅梅に分けて詠んでいる句はあまり無いようですね。江戸時代にはどちらが多かったのでしょうか?白梅は、わざわざ白いと詠まなくても梅と言えば白梅だったのかもしれません。けれども「梅白し」という句もあるので、どちらとも言い難く、庭に咲く姿は見事だったようです。
そして、自然に咲いている姿も詠んでいます。白い梅か紅い梅か、想像してみるのも面白いですね。
最近では品種も多く、白梅が早く咲くと言いますが、寒紅梅などの種類もあり、庭園などではまさにどちらが先か解らないようです。
最後の「むめがゝ」の句は、この中では一番の代表句です。芭蕉の時代には立春がお正月ですから日の出と梅はちょうど良い取り合わせの季節だったに違いありません。梅はお正月と共にやって来て美しく香るお目出度い花だったようです。
(2020・2・8)