成にけりなりにけり迄年の暮
わすれ草菜飯につまん年の暮
年暮ぬ笠きて草鞋はきながら
めでたき人のかずにも入む老のくれ
年の市線香買に出ばやな
月雪とのさばりけらしとしの昏
旧里や臍の緒に泣く年の暮
皆拜め二見の七五三をとしの暮
盗人に逢ふたよも有年のくれ
魚鳥の心はしらず年わすれ
分別の底たゝきけり年の昏
古法眼出どころあわれ年の暮
芭蕉が師走も押し迫った年末の句として「年の暮」を詠んだ句は約12句ありました。年の市や年忘れも含めて抜粋致しましたが、毎年、それぞれの年末の様子が垣間見れます。
年の暮には、芭蕉も魚や鳥を食べて無礼講だったのか、動物を憐れんでいる句が印象的です。
旅の俳聖だけあって旅先で年末を迎えることもあったようですね。見知らぬ土地での切なさを感じる句もあります。
ふだんの旅吟よりどこか切ない年の終わりを惜しみつつ、来る年を待ちわびている芭蕉の気持ちが、時を越えて今の平成に生きる私達にも伝わって来ますね。